経理のがっこう

ブログ「経理のがっこう」は、管理人のこれまでの実務経験から学び、感じた、会計をはじめとしたビジネススキルやビジネスマインドを中心に、1テーマ1話の形式で発信していきます。

経理が社長よりも偉くなる、たったひとつのこと

経理は、その専門知識を活かして、他の部門と協働し、

利益を上げるためにあらゆるサポートを行う部門です。

その意味では、経理が偉ぶったり、上から目線でモノを言うようなことはNGです。
 
ただし、一点だけ、経理が頑として譲ってはいけないことがあります。
それは、お金(キャッシュ)です。
 
キャッシュがまわらなくなるということは、すなわち会社が潰れるということです。
経理はキャッシュの動きを常に管理しなくてはなりません。
キャッシュが滞りなくまわるように資金繰りを行うことは、
経理の最大の使命であり、また最低限の責務であるといえるでしょう。
 
キャッシュについてだけは、そんなに他部門からの要請を受けても、
なあなあになっては絶対にいけません。
厳格に、厳密に、時にケンカになったとしても、
ダメなものはダメと、ピシャリと言ってのける強さが必要です。
これは、相手が自分より役職が上とか、社歴が上の人に対してももちろんのこと、
たとえ会社のトップである社長であっても変わることはありません。
資金繰りの悪化によって会社を潰すということを未然に防ぐ、
この一点に関してのみ、経理は社長よりも強い権限を持っているのです。
 
もちろん、実際は、会社のトップであり人事権を持っているのは社長ですから、
提言の仕方などは気を遣わなければいけないのは言うまでもありません。
(会社がなくなる前に、自分の職がなくなってしまいますので…)
 
しかし、それぐらい、経理はお金について責任を持たなければならないのです。

「知識重視=優秀な経理パーソン」ではない

しばしば経理部門は専門的であると言われます。
これは経理の主な業務が、簿記や会計、税法などの知識を必要とする内容であることが
大きな理由のひとつかと思われます。
 
これらの分野を勉強して知識の習得に励むことは良いと思いますが、
気をつけなければならないポイントがあります。
 
それは、知識偏重主義に陥らない、ということです。
 
税理士や会計士としてやっていくのであれば、試験のために条文を暗記したり、
年々変わる法改正をつぶさに調べていくといった作業も必要でしょうが、
経理パーソンのプロとしてやっていくのであれば、
そこに時間や労力をかけ過ぎてしまうことは、むしろナンセンスです。
 
ほとんどの会社では、税務申告のために、
税理士と顧問契約しているのではないでしょうか。
もし、会計基準や税法についてわからないことや疑問が生じたのであれば、
遠慮なく顧問税理士に直接尋ねればいいだけの話です。餅は餅屋です。
会計や税法を業務で扱うからといって、
何も経理がすべてに精通していなければならない、
ということは全くありません。
 
それよりも、経理パーソンとして重要視しなければならないことはたくさんあります。
例えば、事業計画に合わせてB/S、P/L、
キャッシュフローにどのような変化が予想されるか、
それらの数字をより良くするために各部門でどのような取り組みをすべきか、
各部門および会社全体の利益向上のために
経理としてどのようなアプローチができるか、など…
 
これらのことは、顧問税理士がやってくれるということはほとんどありません。
顧問税理士は、あくまで外部の専門家です。
会社内部の会計的、数値的専門家は、
まず第一に経理パーソンが担わなくてはなりません。
会社内部の専門家として、コミュニケーション能力の向上に努めるということが、
税理士や会計士並みの知識を習得するということよりも何倍も貢献度が高く、
重要視すべき内容なのです。

「費用収益対応の原則」について考える

「費用収益対応の原則」という言葉があります。
 
「費用収益対応の原則」とは・・・
 
「収益と費用をできる限り企業活動上の経済的因果関係に即して
把握すべきであるとする、期間損益計算の基本原則である(Wikipediaより)」
 
ということです。
 
企業は、自身の経営の結果を内外に報告する資料として、
事業年度(例えば1年間)ごとに損益計算書を作成します。
この時、この企業の1年間の収益は○○円、1年間の費用は○○円、
だから利益は○○円出ました!
といえるように、1年間という期間内に発生した分だけを集計する処理をします。
これが、「費用収益対応の原則」の実務運用になります。
 
このことからも分かるように、実際には、
一定の会計期間で区切られた収益および費用を計しているということですから、
必ずしも収益に応じた費用が集計されているということではありません。
売上原価や販売促進費など、収益と費用の関係性が比較的強い科目もあれば、
交際費や図書費など関係性が弱い科目もあります。
また、同じ科目で処理されていても内容によっても様々です。
 
そしてもっと大事なポイントは、
費用の中には投資的内容のものも含まれているという点です。
研究開発費などはその代表的な科目ですが、例えば販売促進費や広告宣伝費なども、
新しい事業やエリアに展開する際の試験的取り組みなども含まれることがあります。
これらは、タイムラグはあれど、
後々の収益拡大につながる可能性を含んでいるものですから、
むしろ積極的にかけるべき費用ということも考えられます。
 
結局のところ、「費用収益対応の原則」というのは、
決算を組むためのルールという意味合いに過ぎず、
実際に収益改善や経費削減に取り組むときには、
実際に即した精査を行うという手間を加えることが必要不可欠です。
収益および費用に与える影響をひとつひとつ地道に精査していくことが、
確実な利益を生んでいくのです。

「財務会計」と「管理会計」の区別は明確に

経理の仕事は、主に2つの種類に区別することができます。
ひとつは、仕訳をし、B/SやP/Lを作成し、
決算を取りまとめるといった一連の流れに付随する「財務会計」という仕事。
もうひとつは「財務会計」などで取りまとめられた様々な数字を活用し、
分析して、経営改善に役立てる「管理会計」という仕事です。
 
中小企業や経理の弱い会社では、「財務会計」に多くの時間を割かれてしまい、
管理会計」はほとんど手付かずの状態というところも多いかもしれません。
 
前述のとおり、「財務会計」は決算を取りまとめる一連の流れに付随する仕事です。
決算はどの会社であっても必ず取りまとめる必要がありますので、
財務会計」をやらなくてもいいという選択肢は必然的にありません。
これに対して「管理会計」は法律で義務づけられた会計制度ではありません。
(経営に役立たせることはできるけれど)やりたければやればいいし、
やりたくなかったらやらなくてもいいですよ、というスタンスなのです。
 
したがって、人的、時間的に余裕がない中小企業などでは、
管理会計」は後回し、結果的に手が回らなかった、ということがよく起こります。
あるいは、そもそも「管理会計」に対する意識がほとんどなく、
決算を取りまとめただけで満足して終わってしまう経理もあります。
財務会計」が大事な仕事であることは違いありませんが、
会社経営に貢献できる経理パーソンを目指すのであれば、
より一層「管理会計」に取り組む必要があるでしょう。
 
では、どうやって「管理会計」の時間をつくればいいのでしょうか。
それは「財務会計」をいかに効率化できるかがポイントになります。
しかし、それ以前にまず第一に重要なことは、
財務会計」と「管理会計」を区別して、しっかりと意識すること。
漠然と経理の仕事として捉えるのではなく、
この2種類の仕事を意識することだけでも、
どの業務に時間を割くべきか、どの業務は効率化すべきか、
といったことが明確に見えてきます。

あなたの会社は儲かってますか?

会社が儲かっているかどうかを判断する指標として、
一般的に「損益」を参考にすることが多いでしょう。
利益は財務諸表のひとつである「損益計算書」(
英語で profit and loss statement、略してP/Lといいます)に記載されています。
 
P/Lは売上高と費用、そしてそれらの差額である損益が記載されています。
売上高マイナス費用がプラスであれば利益、マイナスであれば損失ということです。
ですから、会社が儲かっているかどうかは、利益が生じているのか、
それとも損失が生じているのかを見ればわかります。
ただ、ここで少しややこしいのは、
一口に「損益」といっても○○利益(損失)というように、
いくつかに区分されて記載されていることです。
 
売上高から、税金を含むすべての費用を差し引いた後の利益を
(税引き後)当期純利益といいます。
すべての費用を差し引いた後に残った利益ですので、
いくつかの利益のなかでも最も金額が少なく、
会社が儲かっているかどうかの判断材料のひとつになります。
 
P/Lは、売上高からはじまり、いろいろな費用をマイナスして、
最後に(税引き後)当期純利益を記載するという形式になっています。
利益がいくつかに区分されるといいましたが、
それは(税引き後)当期純利益に至るまでの過程で、より詳細な区分を行い、
それぞれの段階でどのくらいの利益が生じているかを見ているのです。
 
P/Lに記載される利益は、
(税引き後)当期純利益を含めて全部で5つに区分されます。
売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引き前当期純利益
そして「(税引き後)当期純利益」の5つです。
それぞれの利益については別の回にあらためて書きますが、
(税引き後)当期純利益だけでなく、その他の利益をみることにより、
会社が何で儲かっているのか(または損しているのか)がわかるようになります。

経理のお仕事を考える

経理のお仕事は財務諸表を作ること、
と考えている人が意外なほど多いように感じます。
 
財務諸表を作ることは経理の仕事のひとつではありますが、
それが主要な仕事と考えているのであれば、残念なことです。
経理には、財務諸表を作る以外にも、
もっと重要で、もっとおもしろい仕事があるからです。
 
その仕事とは、ズバリ「管理会計」です。
 
経理に限ったことではありませんが、企業の一員としての価値は、
自分の仕事を通じてどれだけその企業に貢献することができたか、だと思っています。
この観点で考えると、財務諸表の作成という仕事は、
残念ながら、企業に対する貢献度はほとんどないと言わざるを得ないでしょう。
 
たしかに財務諸表の作成は経理にしかできない仕事ですし、
必ず作成しなければならないものですので、
大切な仕事のひとつであることは間違いありません。
また、決算期は仕事量も膨大で大変なので、
やり遂げた達成感や充実感も得られると思います。
でもそれは、経理として当たり前の作業をしただけの話。
例えていうならば、総務がミスなく給与計算を行うようなことと同じで、
出来て当たり前の仕事なのです。
厳しい言い方になってしまいますが、その意味では、
何ら新しい価値を産み出していないということも言えるでしょう。
 
もちろん、経理としての本当の貢献である管理会計を行うためには、
前提として財務諸表などの会計資料が必要になります。
その意味で、財務諸表の作成という仕事も意義があることに違いありません。
ですが、それが経理の主要な仕事となっているならば、
考え方を改める必要がありかもしれません。
 
金子昭先生は、ご著書「経理・財務」のなかで、
財務会計2割、管理会計8割」という表現がなされていますが、
ほとんどの企業ではその逆で「財務会計8割、管理会計2割」、
あるいはそれ以上に財務会計に時間を割いている経理が多いのではないでしょうか。
この考え方でいえば、経理は貢献度の高い仕事をほとんどしていないということです。
 
財務諸表を作る仕事は、経理全体の2割の仕事。
できるだけ効率的に終わらせて、貢献度の高い管理会計の仕事に時間を使う。
このように意識を変えることが、企業に貢献する経理に生まれ変わる
第一歩となるでしょう。